食パンと因果応報

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画像はフリーネットから

 

まだ私が今よりは若い頃、

仕事、義母の介護、子育てと目が回るほど忙しかった頃の話しから始めます。

近所にとても美味しいパンを出すベーカリーが有りました。毎日食べる食パン、イギリスパン、調理パン、どれをとっても美味しくて、特に食パンの美味しさは群を抜いてました。パンは必ずそこで買って居たのです。いつも昼間、店員さんの顔しか見てませんでした。

ある日どうしてもそのパンを家族に食べさせたくて夕方取りに行くという事で取り置きをして貰いました。店員さんが受け付けてくれました。

ところが目の回るほど忙しくて受け取りに行く時間が遅くなってしまったのです。電話入れて取り置きのキャンセルを早めにすれば良かったのです。申し訳ない気持ちで店に急ぎました。

店員さんはもう居なくてパン職人の店主が残って後片付けをしているところでした。余りに遅いのでパンは売ってしまったと、其れは仕方の無いことです。謝って居たら負いかぶせるように冷たく言いました。

「こっちも余裕のある商売をしている訳では無いんだ、約束を破るなんて言語道断だ。何で人だ!」

突き放す鋭い言い方でした。でもこちらが悪い。平謝りに謝って何とか店を出る事が出来ました。その時、抜群の食パンだけど二度とここには来ない。そう決めたのです。

常連の客が多くて一人はどうでも良かったのでしょう。怒りに任せた物言いでした。でも物には言い方が有る。あまりにもショックで帰る道道涙がこぼれてきました。

それから二度と本当に足を運ば無かったんです。

それからどの位の月日が過ぎたのか、パンはスーパーで買ってましたが、でもあの味を忘れる事出来ません。我慢してました。

ある日かかりつけのクリニックに行く道をいつもとは変えて見ました。気まぐれからなのですが、

そこに他のベーカリーを見つけて帰りに寄って見ました。食パンや調理パン、フルーツの乗ったにデニッシュパンなど買いました。とても感じの良い店主がパンを焼きながら私の顔を見て食パン切ってあげるよ、何枚がいい?と聞いてくれました。とても感じの良い店主です。次に行っても、いつ行っても態度は感じよく、そこの奥様とも仲良くなりました。

パンはそこで買うと私は決めて、今でも買いに行ってますが、残念ながら調理パンは驚くほどおいしい。デニッシュ等も美味しい。だけど食パンは.....。其れは私の口にはという事でしょう。

それでも店を変えること無く今でもそこに行っているのはやはり人間関係の良さなのだと感じている。

どんなに美味しくてもあんな態度しか出来ない店主と思った時その味も今の店の方が勝っていると感じるのが不思議です。

美味しい食パンの店はその後早くに店を閉じてしまいました。暫くは車で店主が引き売りをしていたのは知ってます。あんなに顧客があった店なのにと思いました。その時に私はああ、やっぱりね、と思ったのです。引き売りも客が寄り付かなくなったのだろうと思いました。他のお客も同じ思いをしたのだろう。あの態度を見せたら誰でも二度と行かなくなる。

パンを見ると思い出す言葉、

因果応報。